CRAとは?やりがいの大きな仕事の内容から待遇までを詳しく解説!

CRAとは、臨床試験の開始から終了までに発生する手続きを行ったり、自身が担当する臨床試験が法令や実施計画を遵守して進められているかを確認(モニタリング)する仕事です。

新しい医薬品が開発されたからといって、ただちに製品化できるわけではありません。
その有効性や安全性を調べ、治療法として適しているか「臨床試験」を行うことによって確かめる必要があります。

CRAはこの「臨床試験」において大きな役割を果たすため、新たな医薬品を世に出すことに貢献できるCRAという職種に魅力を感じる人は多くいるでしょう。

それではCRAの仕事の内容について解説していきます。

CRAとは?


CRA(Clinical Reasearch Associate)はその仕事の内容から「臨床開発モニター」、あるいは縮めて「モニター」とも呼ばれる職業です。
名称は聞いたことがあったり、興味がある、という方は業界の内外を問わずいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし詳しい仕事の内容まで把握している方は、同じ医療に関する仕事に従事する人たちでさえ多くはないようです。

CRAの主な仕事は治験のサポート

医薬品が開発されるまでには長い期間と様々な工程が必要となっています。
その詳細は後述いたしますが、CRAが関わるのは「治験」と呼ばれる工程です。

新しい医薬品の開発に約9~17年もの長い時間がかかるということをご存知でしょうか。
そしてその内治験が占める期間は約3~5年です。

治験では製品化される前の医薬品の安全性と有効性を確認する目的で、健康な人あるいは患者さんに投与を行います。

CRAは、自身が担当する治験が法律や省令に沿ってきちんと進められているかモニタリングをすることが主な仕事です。
新しい医薬品が世に出るまでに必要な「治験」に携われることは大きなやりがいにつながるでしょう。

本記事を皆さんがご覧になっている今も、多くのCRAがやりがいをもって日々の仕事に打ち込んでいます。
新たな治療法や医薬品を必要としている人々の元へ少しでも早く届けられるよう、努力しています。

新しい医薬品の開発に多くの時間をかける理由

新しい医薬品を世に出すためには、安全性・有効性の確認が必須です。

医薬品が世の中に流通するまでの流れを大まかに分けると、下記のような工程となります。
(1)基礎研究(新しい医薬品の候補となる化合物の創出)⇒約2~3年
バイオテクノロジー・化学的な合成・天然の素材からの抽出などさまざまな技術を駆使します。
(2)非臨床試験(基礎研究の結果新たな医薬品の候補となった化合物の、安全性や有効性などを調査)⇒約3~5年
マウスなどの動物に候補の化合物を投与する場合と、試験管の中に培養した細胞に対して投与する場合があります。
(3)治験⇒約3~5年
非臨床試験で効果が見込まれたものは、人を対象にさらに試験を行います。
CRAが関わるのはこの工程です。
(4)厚生労働省への承認の申請と審査⇒約1~2年
これらすべてを通過できたのちに厚生労働大臣が許可することで、はじめて医薬品として認められ、製造や販売が可能となります。

CRAの具体的な仕事の内容と流れ


CRAの仕事内容は大きく3つのフェーズに分けられます

  1. 治験開始前
  2. 治験実施中
  3. 治験終了後

治験開始前

治験開始前のフェーズにおけるCRAの仕事は、次の3つに大別されます

  1. 標準業務手順書(SOP)の作成
  2. 治験を実施する医療機関・治験に対して責任を持つ治験責任医師・薬剤師などの選定
  3. 医療機関への治験の依頼と契約の締結

それぞれを以下で、詳しく説明します。

1.標準業務手順書(SOP)の作成

標準業務手順書(SOP)とは、治験の業務を実施するための手順をまとめた書類のことです。

なおこの中の治験実施計画書(プロトコル)の原案はCRAが作成するのではなく、製薬企業の開発企画担当者や、医療分野における専門的な文章を執筆するメディカルライターなどの職種の方たちが作成します。

SOPの作成や内容の確認には治験の全般に関する知識はもちろん、医師・看護師・治験コーディネーター(CRC)たちとの密な情報の交換が必要です。

2.医療機関・治験責任医師・薬剤師などの選定

治験の実施が決まると治験を実施する医療機関を調査・選定※します

その際、基本的には以下の項目などを勘案します。

  • 治験の対象となる医薬品が属する分野における臨床の実績
  • 専門的な知識の有無
  • 治験の受け入れが可能か
  • 薬事法やGCPを順守できる環境か

なお「医療機関」と聞いて病院だけを思い浮かべる人も少なくないでしょう。
医療機関には病院だけではなく診療所も含まれるため、診療所も選定の対象です。(医療法第一条の五)

※CROでは依頼者様の意向を組みながら医療機関の選定をします。

3.治験の依頼と契約の締結

次に治験を行う医療機関が設置する治験審査委員会(IRB)が、実施する試験の内容について下記3つの観点から審査を行います。

  • 被験者にとって治験は倫理的・科学的に問題ないか
  • 該当する医療機関で行う治験内容として適しているか
  • 治験の継続は可能であるか

そしてIRBにて治験実施について承認が下りた後、医療機関と治験実施に関する契約を結びます

その後、治験責任医師・看護師・薬剤師・CRCらといった治験に関係するスタッフが一堂に会するスタートアップミーティングを実施し、治験を進めるにあたって必要となる業務の最終確認などを行い、いよいよ治験が開始されます。

治験実施中

CRAは臨床試験モニターとも呼ばれるのですが、主に行う仕事としてモニタリング業務が挙げられます

モニタリング業務ではCRF(症例報告書)や治験の状況などから、GCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)やSOP、治験実施計画書にしたがって治験が進められているかを確認します。

CRAはモニタリングした内容を、験の質と信頼性を保つために「モニタリング報告書」として記録します。
記載が必須である事項は主に下記が挙げられます。

  • 実施日時、場所
  • モニター氏名
  • 実施機関対応者氏名
  • モニタリング結果

一方CRFは主にCRCが作成するもので被験者の様々なデータが記載されます。

CRAはカルテや看護記録や治験薬の投与記録などが記載されている原資料とCRFの内容に転記漏れや齟齬がないか、原資料に矛盾点はないかなどの確認を行います。

CRFに修正すべき点などが見つかったときには、CRAから治験責任医師やCRCに修正依頼をします。

また治験実施中に被験者に有害事象が発生する可能性もゼロではありません。
病状が非常に重いと医師が判断したとき、真っ先に報告するのはCRAです。

さらに治験責任医師や治験分担医師から詳細な情報を入手したCRAは、治験依頼者である製薬企業の安全性管理担当者に報告します。

治験終了後

治験開始前に作成したSOPの段取りに沿って治験を終了させます

医療機関に保管されている治験薬はすべて回収し、その他CRFなどの資料に問題が残っていないか、治験薬を紛失した場合はその数なども合わせすべての確認を行います。

治験責任医師や関係機関に終了の報告を行うことで治験の全工程が終了します。

CRAの仕事の魅力


医療に関係する仕事の年収は、総じて高い傾向にあります
高い専門性が求められるためであり、CRAも例外ではありません

しかし、CRAという仕事の魅力は年収だけではありません。
ここでは年収とは別の魅力について説明しています。

多くの人を助ける可能性を秘めた、新たな医薬品の開発という、社会貢献度の高い開発業務に第一線で関われるのがCRAの魅力です

人類の歴史には様々な病気との闘いがあり、昔も今も変わらず効果の高い治療法や治療薬が求められています。
近年の科学やテクノロジーの発達は目覚ましいものですが、それでも現存するすべての病気に対して治療法や治療薬が確立しているわけではありません。

前述のように医薬品の開発には約9~17年、場合によってはそれ以上に期間がかかることも珍しくなく、開発の時間を少しでも短くすることが出来れば1人でも多くの人を助けられるかも知れません。

自身がCRAとして携わった医薬品が治療に使用され誰かの健康や命を救う可能性を考えると、CRAが果たす社会への貢献度は非常に高いとお分かりいただけるかと思います。

CRAの将来性

現在CRAは売手市場と言われています

目覚ましく医療が発展したとはいえ、治療法や治療薬が確立されていない病気はまだ多く存在しています。
新型コロナウイルス感染症のように突如として世界規模のパンデミックが発生したり、新たな病気が発見される可能性はまだまだ考えられます。

また未知の病気だけでなくすでに治療薬が開発されている病気に関しては安全性や有効性を更に高めるための研究も多く行われています。

こういった理由から医薬品の研究・開発が必要不可欠であり続ける限り、CRAの需要がなくなる可能性は低いと言えます。

ですが、CRAにとって追い風ばかりではないのが現実です。

医薬品の開発は年を追うごとに難易度を増しています。
難易度が増すにつれ研究開発にかかるコストや時間は以前よりも格段に増えており、それらを抑制すべく医薬品の開発をより効率的にできる可能性を持つ、様々な技術の発展及び医療業界への活用が期待されています。

例として下記の4つが挙げられます。

  • ブロックチェーン技術の応用
  • Decentralized Clinical Trial
  • DDC(Direct Data Capture)
  • Quality by Design

効率的に医薬品が開発できれば、CRAへのニーズが小さくなることも考えられます。

しかし学術レベルで医師や専門家とディスカッションできるような医学的知識を習得し、各ステークホルダーとコミュニケーションをとれれば、CRAとしての価値は拡がってくると思われます。
そしてさらにスキルを増やすことが出来れば、より長く活躍できるでしょう。

キャリアアップ

CRAのキャリアアップ例として、主に治験全体のマネジメントやピープルマネジメントが挙げられます

治験全体のマネジメントを行う場合はある程度の経験が必要です。
メンバーのマネジメントをはじめ治験のタイムラインや予算、品質などを管理する役割を担います。

CRAのピープルマネジメントを行う場合はCRAを期待されるレベルに到達させるために必要な教育を行ったり、業務がタイムライン通りに実施できているか監督することでプロジェクトの品質向上に寄与します。
またCRAの中長期的なキャリア開発のサポートも行うといった役割を担います。

コミュニケーション力の高い人に適した仕事

医薬品に関連する資格を有していなくても、CRAはコミュニケーション力に自信がある人に推奨できる職種です

理系の大学院や学部を卒業した人、または医療系の資格や経験を持つ人がCRAとして採用されやすい傾向にあるのは否定できません(医療系の資格とは、薬剤師・臨床検査技師・看護師などです)。

しかし医療系の資格を持っていたとしても、人と接することが苦手な場合にはCRAの仕事を継続することにいずれ困難さを感じるようになる可能性があります。
CRAはさまざまなステークホルダーと交渉・連携する機会が比較的多い職種であるためです。

医療系の資格や経験がなくてもコミュニケーション力を上手く発揮することが出来れば、未経験からでも十分に活躍できるチャンスがあるのがCRAの良いところです。

CRAの職場

製薬企業とCRO(Contract Research Organaization:開発業務受託機関)のいずれかで働くことが一般的です。

それぞれの違いを見ていきましょう。

製薬企業

製薬企業のCRAとなった場合には開発部門に配属されるケースが多いようです。

製薬企業は医薬品の研究段階から販売までを自社で行うことがほとんどであるため、製薬企業のCRAはモニタリング以外の業務を担当する可能性があります。
例えばCROに所属するCRAの管理や厚生労働省などへの申請も製薬企業に所属するCRAが担当する可能性のある業務です。

また製薬企業は自社製品の開発のみを行うことがほとんどであるため、CRAとして経験できる領域は所属する製薬企業の開発領域に依存することになります。

臨床開発を全体から俯瞰でき、医薬品の開発に深く携われることが製薬企業のCRAを選択するメリットと考えられます。

CRO(開発業務受託機関)

一言でCROと言っても受託型CROと派遣型CROがあります

受託型CROは製薬企業から治験を受託してモニタリングを主とした臨床開発に関わる仕事を行います。派遣型CROは製薬企業やCROといたった企業からの要望に沿ってCRAを派遣する仕事を行います。

派遣型CROのCRAは製薬企業やCROのCRAとチームを組んで、モニタリングを主とした仕事に取り組みます。
一方、受託型CROのCRAは自社のCRAとともにモニタリング業務に従事します。

CRAの勤務形態と待遇について

やりがいや社会的な貢献度の大きさに引かれてCRAという職業に興味を持った人でも、CRAの日常や収入なども知りたいところではないでしょうか。

すでにご説明したように、同じCRAと言っても勤務先には複数の選択肢があります。
詳しくは、弊社の採用サイトを参考にしてみてください。
参考:『レメディグループ採用情報 | レメディグループ

CRAの勤務形態

一般的にCRAは内勤と外勤のどちらも行います

外勤が生じるのは治験を実施する医療機関を訪問しなければならないためです。
訪問先の医療機関が必ずしも自身の職場の近くにあるとは限らないので、遠方への出張が必要な場合も多くあります。

勤務する企業のオフィス内で報告書を作成するなどの仕事をするのみならず、出張で各地に出向くこともあると考えておくべきでしょう。

また一般的な残業時間は月20~30時間ほどの場合が多く、土曜日・日曜日・祝日は休日とされています。

ただし、休日であっても被験者の状況に変化があったときなどには治験担当医師(治験責任医師と治験分担医師)から連絡が入る場合はあり得るケースです。

働き方についてはフレックスタイム制度の利用や在宅勤務を取り入れた企業もあります。

製薬企業とCROの比較

所属(勤務)先を製薬企業とCROのどちらにするかによっても、年収に差が生じるケースもあります

CRAとして働くにあたって、製薬企業かCROに所属するかによって得られる経験も異なります。
経験と年収のどちらを重視するか、自分自身でよく考えて企業を選択することが大切です。

まとめ CRAは社会的貢献度の高い仕事!未経験でも転職できる可能性は有り


紹介してきたように、CRAとは多くの魅力がある仕事です。

医療に関連する資格や経験がなくても、コミュニケーション力やポテンシャルに重きをおいて採用を行う会社もあります。

また薬剤師などの医療に関わる仕事の経験があればさらに転職の可能性は上がります。

魅力的なCRAを本気で目指してみるのはいかがでしょうか。