ニーズ高まる再生医療研修~研修の実施体制と内容~

前回の記事では、社内向けに開発した「再生医療スペシャリスト認定制度」で培った知見を「再生医療研修」として社外のお客様に提供することになった経緯について取り上げました。

今回の記事では、実際に社外のお客様を対象にして実施した「再生医療研修」を掘り下げながら、研修の実施体制から内容について、講師を務めるS.Yさんに詳しく聞いてみました。

直近に実施した研修にフォーカスして、お話を伺っていきたいのですが、クライアント様からはどのような背景や経緯から研修の依頼をいただいたのでしょうか?

S.Yさん:実は、今回のクライアント企業へは、研修ではなく別の案件でお伺いした際に、「再生医療研修」についてもご紹介をしたところ、強く興味を持たれ、

「是非、うちでもやってほしい。」と、その場ですぐに受講を決断していただきました。背景を伺ったところ、再生医療領域にビジネスを展開していく中、社員教育を充実させていきたいが、社内では十分な研修体制を構築できていなかったとのことで、弊社の研修は「まさに探していたもの」だったと伺っております。

研修の実施に関して、クライアント企業からは、研修内容などについて、カスタマイズなどのご要望はありましたか?

S.Yさん:研修内容について、標準的な資料をお見せしつつ、カスタマイズなどのご要望がないか伺いましたが、「この内容で十分!特に、カスタマイズして欲しいところはない。」とのことでした。

ただ、新型コロナ禍での研修となるため、極力社員の移動をせず、対面とリモートを併用しての実施をお願いしたいとの要望をいただきました。

なるほど、コンテンツとしては、標準的な内容だったわけですね。「再生医療研修」の標準的な内容とはどのようなものなのでしょうか?

S.Yさん:

標準的な再生医療研修のパッケージはトータル10時間で、

・基礎編

・法律編

・品質・安全性編

の3回に分けて行います。

実際、研修の内容や時間などは、クライアント企業の要望や受講対象者に応じて、フレキシブルにカスタマイズしています。

まず基礎編では、細胞やウイルスベクターと言った再生医療を理解する上で重要な基礎知識や専門用語を学んでいきます。再生医療の法律には再生医療特有の専門用語が多く出てくるので、規制を正しく理解するためには、基礎知識と専門用語を予め理解しておかなければなりません。そういった意味でも、基礎編では後に続く、「法律編」、「品質・安全性編」を理解する上で必要かつ重要な基礎知識と専門用語が網羅されています。さらに、日本で承認されている再生医療等製品全9品目について、どのような製品が、どのような試験を行い、承認されたのかについても基礎編で網羅的に学ぶことができます。

次に法律編では、再生医療を実施する際に守らなければいけない法律にはどのようなものがあるのか、全体像を把握するところから始めていきます。その後、治験を実施する場合はどの法律に従うのか、臨床研究の場合はどうなのかと、それぞれのケースごとに、具体的に規制の内容を見ていきます。

これによって、治験ではなく臨床研究が行われることの多い再生医療等製品で、遵守すべき適切な法律を踏まえつつ、検討を進めていくことが可能になります。

品質・安全性編では、first in human試験の前にやっておかなければいけない非臨床試験の内容や検査項目及び製品製造の過程で行われる品質検査の内容や項目について、ガイドラインを基に紐解いていきます。

これによって、再生医療等製品の開発や製造販売後において、製品の同等性など何に留意して、検討を進めるべきかが分かります。

今回の研修に関して、対面とリモートを併用しての実施ということですが、どのような状況で実施されたのか、その体制についても教えてください。

研修は、我々がクライアント企業のオフィスにお伺いし、会議室にて行いました。

お伺いした東京オフィスでは4名の受講者が対面で参加され、その他にクライアント企業の国内外にある複数拠点からリモートで参加されました。リモート接続に関してはMicrosoft Teamsで繋ぎ、全体で約30名の受講者を対象に研修を行いました。

受講対象者の背景は、臨床開発、品質管理、培養技術者など、様々なバックグラウンドを持つ方々でしたので、クライアント企業から標準的な研修をご依頼いただいたことは理にかなっていたと感じました。

 

研修の雰囲気はどういった感じでしたか?

S.Yさん:対面だけでなく、リモートも兼ねてということもあり、こちらから一方的にお話する形ではなく、疑問があったときは、その都度質問してもらう形で進めました。実際に研修の途中、タイミングをみて、こちらから質問を促したところ、受講者の皆様からは様々な質問をいただきました。こういった経緯からか、受講者の皆様からは、「とても質問がしやすくてよかった」とリモートでもありながら、満足したことがうかがえるコメントをいただきました。

質問がしやすくてよかったという受講者の声があったということですが、雰囲気作りとして心がけることはありますか?

S.Yさん:リモートで研修を実施する際の難しい点として、「受講者の顔が見えない」ため、どの程度理解をしているのかなどが、対面よりも分かりづらいということがあります。

今回は受講者が30名程度と比較的少ない人数の研修だったこともあり、「研修中で遮ってもいいので質問してくださいね」と言って開始し、都度都度質問を促すようにし、受講者が質問をしやすい環境を作ることを常に心がけました。

受講者からどのような質問がでましたか?

S.Yさん:研修の内容に関する質問から、受講者の日常業務の中で困っている事や疑問に思っている事まで多数挙がりました。

時には、受講者の方の自社製品に即した、「こういう時はどうしたらよいですか?」といった具体的な質問もありました。

質問がたくさん出てくると、リモートとはいえ、研修に活気が生まれ、他の受講者から更なる質問が出てきたりと、受講者の状況をつかむことが出来、研修の成功に大きく影響します。

また、受講者の方から鋭い質問をいただく事もあるのですが、このような質問は受講者の理解をさらに深めるきっかけとなり、研修を盛り上げていくことに有効であると考えています。

第2回では、実際に実施した「再生医療研修」の事例を基に、その実施体制と内容にフォーカスし、研修の輪郭を掘り下げてまいりました。今回お届けした事例では、標準的な研修をご提供いたしましたが、クライアント企業のニーズに合わせたカスタマイズや受講者のレベルに合わせて研修時間の拡張や分割なども併せて行っています。

次回は、新型コロナウイルスが流行している状況下では、どのようにして研修を実施しているのか、実際に起きたハプニング等も含め、引き続きS.Yさんにお話しを聞いてみます。

次号も是非、ご覧ください!